2008年4月28日月曜日

ボサノバなんか聞かない

ボサノバなんて聞かない

(ほぼ無言劇)

登場人物

白痴のような男 ヨシオ
身なりのボロボロの女 ミミ
ルイ
軍人
セレブ達



遠い未来のとある国の出来事

シーン1

核戦争化の国。
ヨシオはセレブしか入れない、シェルターで一人音楽を聴いている。
シェルターはそれなりに広く、ソファや、テーブルなどが複数あり、テーブルには豪勢な食事やシャンパンなどがある。
セレブリティー達は惨劇など他人事のように思い思いに気楽に過ごしている。
そこに、ボロボロの身なりのミミが入ってくる、身なりこそボロボロだが、その美しさは人目見ただけでわかる。      
そんなミミにセレブの男たちはいやらしい笑みをうかべ寄っていく。
しかしミミはそんな男のことなど意に介さず、テーブルにあったチキンを手づかみで食べる。
そしてひとしきりご飯を食べたあと、その辺の床に寝転がる。
あまりに野性的な行動にセレブの男たちは呆れ果て、ミミを軽蔑するような目で見る。

シーン2

シーン1から時間経過

ヨシオは相変わらずヘッドフォンで音楽を聴いている。
シェルターには先ほどまで居なかった軍服を着ている男がいて、隣には先ほどミミにちょっかいをかけようとしていたセレブの男が二人いる。
周りはさきほどとはうって変わり緊張感のある雰囲気。
しばらしくして、その二人をつれて軍人は外に出ようとする。
しかしセレブの一人はすごく抵抗をし、ついに軍人は部下に命じそのセレブを射殺する。
軍人は何事もなかったように、男一人だけをつれて外に出る。
まだ寝ているミミ。

シーン3

シーン2から時間経過。

先ほどのことなど何もなかったかのようにすごすセレブ達。
死体は片付けられている。
ヨシオとミミは相変わらず。
1組だけ様子のおかしいセレブ、ルイ。
どうやら自分のイチゴを誰かに食べられたようだ。
しきりに、あるお皿を指さしている。
しかし誰もそれを気になどしていない。
周りからは軽蔑のかすかな笑い声がクククと漏れる
さらに憤るルイ、怒りで体が振るえ、蕁麻疹のようなしっしんが出来る。
痒くてのたうちまわるルイ。
それを見てまた笑うセレブ達(今度はアメリカのシュチェーションコメディーのような感じ)
ルイはヨシオと目が合い、おもわず椅子に座っているヨシオを跳ねとばし、ヘッドフォンをとりあげて自分の頭にかぶせる。
セレブ大爆笑(ドリフのように)、しかしセレブ達の予想に反し徐々に落ち着きをとりもどすルイ。
いぶかしげなセレブ達。

シーン4

シーン3から時間経過

ルイは陶酔しきった表情で音楽を聴いている。
セレブ達ははじめてみるルイのそんな表情に驚き、ざわつく。
ヨシオは音楽を聞けず暇になり、部屋のすみでただニヤニヤしている。
そこにセレブがやってくる。

セレブ1 「ヨシオ、あれはどんな音楽なんだ。えっ、お前は一体どんな音楽を聴いていたんだ!」

一人が来たら、次々とやってきて同じような質問をし、もの欲しげにヘッドフォンを見つめる。
そこに先ほどの軍人がやってくる。さきほどとは違い右腕がない。
軍人がきたのでまた急に態度を変えしっかりするセレブリティー。

軍人 「国家総動員法が発令された、貴様らとてもはや例外ではない。2日後シェルターは閉鎖される。」
  
それだけ言うとそそくさと軍人は去る。
唖然とするセレブ達、恐怖で腰を抜かすものもいる。
   (間)
いきなり一人のセレブが音楽を聴いていたルイに飛び掛りヘッドフォンを奪う。
それに端をはっし、ヘッドフォンをめぐるセレブ達の喧嘩が始まる。
その喧嘩はリアルなものではなく、ケーキに頭を突っ込んだりとどこか滑稽。
   (しばし喧嘩)
それをみてヨシオは、ケラケラと笑いながら、スピーカーに取り付けられていたヘッドフォンを抜く。
すると、大音量でスピーカーからボサノバが流れる。
シェルター中に響き渡るボサノバ。
しばらくそれを聞き、うっとりとするセレブ達。
大音量のせいでさっきまで寝ていたミミが起き出す。
あたりを見ると、みんなが音楽に陶酔し我を忘れている。
   (少し間)
耳を塞ぐミミ。

セレブ2 「(恍惚とした表情で)なんだ、ボサノバを聞かないのかい?」
ミミ 「・・・ボサノバなんか聞かない」

ミミはヨシオと目が合う。
ミミは扉のほうを指差し、一緒にここを出ようかと手で合図を送る。
ヨシオはうなずく。
二人は手をとりシェルターを出る。

シェルターの中に残ったセレブ達は、ボサノバのかかったシェルターの中、いつまでも恍惚とした表情で小刻みに体を動かしている。
 
エンド 

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