『毒饅頭と雪饅頭』
僕は噂の毒饅頭を食べてしまったみたいだ。
眩暈、吐き気、動悸、が襲ってくる。しばらくすると気絶してしまった。
夢を見た。
中国の工場の中、白い作業服を着た連中が、こっちをじっと見ている。
「ごめんよ、お前が食べるとは思わなかったんだ、お前は俺たちの味方だもんな」
味方かな、少し考えたが何も言わなかった。
「ごめんよ、お前にまで苦しい思いをさせて、俺たちはやっぱり地獄におちてしまうよな、わかっているんだ、わかってるんだよ」
たぶん僕は死なないからそこまで言はなくても、と言いかけたが、なんとなく言い留まった。
目が覚めた、目覚めると病院のベッドの上にいた。
僕は中国人、あいつらの悲しみを知らないわけでもない、しかし夢の中で結局あいつらに何も言えなかった。後悔が残る。
窓の外には、雪。
ガチヤ、ドアが開き、恋人が入ってきた。
「気がついた」
「うん」
「雪積もってるよ」
「それ何、雪ダルマ?にしては頭の部分がないよね」
「雪ダルマじゃないよ、雪饅頭。食べてみる、毒入りかも?」
恋人は笑う、僕も笑う。不謹慎な冗談。なぜか少し体が楽になった。
僕は雪饅頭を食べる。これを食べて死んだって僕はかまわない。
雪饅頭はなぜかとても甘い味がした。毒入り?まさか。
雪饅頭を食べた3分後僕は死んでしまった。
死因は雪饅頭、ではなく、毒饅頭。使っていた薬品が人体に重大な影響を及ぼす劇薬だったそうだ。
恋人は最後に不謹慎な冗談を言ってしまったことを悔やんでいた。悔やむことはない、それで救われたのだから。最後に会えてよかった。
僕は天国であいつらを待っている。大きな声で言いたいことが出来たのだ。
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